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同人関係のtipsなど

【最新版】CanvaでなんとかしてA5同人誌の表紙を作る

※2021/12/12 「1-1.Canvaに登録する」でアプリの扱いに関して加筆修正済み

この記事は、筆者が2018年11月5日にnoteで「Canvaと「かんたん表紙メーカー」で3分で入稿できる表紙を作る」というタイトルで投稿した記事を移行、ならびに2021年12月現在の情報にアップデートしたものです。
以下、流れは元の記事とほぼ同一ですが、利用ソフトの仕様が異なっています。はてブロでもどうぞよろしく。

 

------ここから本題-------

この記事は、A5判型・小説同人誌のデザイン表紙を、無料グラフィック編集ソフト「Canva」で作る方法を説明しています。字書きが表紙を自力で作るハードルをどうにか下げて、推しにまつわる小説本をこの世に増やしたいという欲望の元に書きました。

はじめに

このhow toは「誰かに頼む余裕もないけど、表紙を作ったこともない、描画ソフトなんてない、しかしどうにかして書き上げた小説を本にしたい……」というつらい状況の文字書きが、何とかして印刷所に入稿できる表紙を作る、ということを目的としています。正直なところ「Illustratoradobe社のソフトです)1ヶ月単位で契約したほうが100倍楽では!?」と思う箇所が大量にあるんですが、とにかく初期投資ゼロで表紙作りは可能である、ということをいっぺん試してみたいと思います。

この記事で作るもの
印刷所に入稿できる、A5本のPDFデータ(表・裏表紙、背表紙が全てセットになったもの)を作ります。見開いた状態で、左側が表紙・右側が裏表紙になります。完成イメージは以下の通り。

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1.データを作る前に

1-1.Canvaに登録する
Canvaへの登録を済ませておいてください。以下リンク先右上の「登録」からユーザー登録できます。PCブラウザでの操作画面を説明に使っていますが、iPad, iPhoneからもブラウザ利用ができますし、アプリもあります。
https://support.canva.com/ja_jp

なおアプリの場合、サイズ指定がpixel単位しかできないため、今回の制作方法には不向きです。ブラウザ版をご利用ください。

アップデートにより、mm・cm単位の設定が可能になりました。
ブラウザ版・アプリどちらでも好きな方をご利用ください。(2021/12/12加筆修正)

1-2.印刷所を決める
文字書きが本を出す時に悩むことはめちゃくちゃあると思いますが「印刷所どこにすればいいんだ問題」も重要ですよね。今回は「表紙データをPDF入稿できる印刷所」にしてください。2021年現在、PDF受付がデフォルトの印刷所はめちゃくちゃ増えた!朗報!

1-3.背幅を計算する
表紙周りで作らなくてはいけないものは「表紙(表1)」「裏表紙(表4)」「背表紙」の3点です。表紙・裏表紙にサイズの差はありません。ですが、背表紙のサイズだけは、人によってまちまちです。選んだ本文用紙によっても変わります。印刷所のホームページには、計算方法が載っていますので、各自で計算しておいてください。

1-4.覚えて欲しい用語
2章以降で、特に説明なくぺろっと使う印刷物関係の用語があるので、分からなくなったらここを見てください。印刷所のホームページでも、こうした説明はより細かく掲載されています。(参考:ポプルス https://www2.popls.co.jp/pop/genkou/kihon.html

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表1:オモテ表紙のことです。ここにタイトルなどが入ります。本の顔ですね。
表4:じゃあウラ表紙は表2?と思われるかもしれませんが、表4です。
表1をめくった裏側が表2、表4の裏が表3になるためです。前から順番に番号がふられています。
断ち落とし(断ち切り):本を作る工程ですが、ざっくり言うと「印刷→製本→断裁」の流れで進みます。はじめから完成品ぴったりのサイズで作るわけではなく、後から余分な端を切り落として、きれいな本に仕上げるんですね。この作業を「断ち落とし(断ち切り)」と呼びます。この工程と、文字書きを悩ませる「3mmぬりたしをつけてください」問題は深く関わっています。とにかく、本を作る時にはそういう工程がある、ということだけ覚えておいてください。

2.基本データを作る

2-1.画像サイズを指定する
Canvaで、作りたい画像サイズを設定します。ここで例の「3mm塗りたしてとか言われるけど訳わかんねえよ」問題が勃発しますが、解決していきましょう。とりあえず、下の図をみてください。

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これから作っていく表紙データの、ざっくりとしたラインです。
赤い点線は、私たちが作りたい本(今回はA5)の「仕上がりサイズ」です。
水色の実線は、印刷所が欲しい「3mmぬりたしサイズ」です。
1-4で「断ち落とし」について軽くふれましたが、印刷所では「仕上がりサイズ」である赤い点線部分で断裁をします。ただ、どうしても裁断機の刃が微妙にずれることがあります。すると、どうなるか。

たとえば真っ黒い本を作るとき、赤い点線部分までしか黒インクを載せていなかったとすると、断裁が外にずれた時、フチに白い部分ができてしまいます。大変まぬけです。それを避けるために「多少ずれても平気なデータを作ってくださいね」=「3mmぬりたし作ってね」と印刷所はお願いをしているのです。
そういうわけで「見開き状態の表紙サイズに、上下左右3mmずつ足したサイズを設定すればよい」ということです。もっとわかりやすく丁寧な説明は、各印刷所さんのホームページ見てください。

この仕組みを踏まえて、サイズを計算していきましょう。まずは「幅」から。背幅は10mmと仮定して、計算します。A5本の寸法は148×210mm、です。
横幅の計算式は「左端のぬりたし+表1の横幅+背表紙の横幅+表4の横幅+右端のぬりたし」です。
つまり「3+148+10+148+3」=312mmとなります。計算式でウッとなった方は「302+各自の背幅」で計算してください。

縦はもっと簡単「上のぬりたし+表1の縦+下のぬりたし」です。
つまり「3+210+3」=216mmです。背幅に左右されないので、縦のサイズは、A5本ならみんな一緒です。背幅5mmなら307×216mm、背幅10mmなら312×216mmで作成すればいいということです。他ソフト、wordとかで表紙作る場合も、この計算方法は変わりません。

さて、本来であればこのサイズをCanvaに入力すればいいのです……が、今回の作り方に限っては「2倍サイズ」で作っていきます。上記で出した縦横の数値それぞれを2倍してください。背幅5mmなら614×432mm、背幅10mmなら624×432mmです。ややこしい工程でごめん!
(2倍にする理由はあるんですけども、説明するとそれだけで1記事終わってしまうので「諸事情により、大きいサイズの方が都合がいい」とだけ聞いて、飲みくだしてください。2倍にしないと、ぼやけた表紙になる可能性があります。web上だけで使うデータなら、2倍しなくていいです)

それではいよいよ実作業に入りましょう。
Canvaのホーム画面は、以下の右図のような感じです。右上の「画像サイズを指定」から、サイズを入れましょう。最初に単位をmmにするのをお忘れなく。

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2-2.ガイドを表示させる
サイズを指定すると、↓この画面が出てきたかと思います。画面左側がツールボックス、右側が作業場所(キャンバス)、という感覚です。キャンバスに文字や写真を配置して、表紙を作ります。

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さて、このままだとどこが背表紙部分にあたるのかよくわからないので、とりあえず真ん中に目印つけましょう。
上部の「ファイル」で、「定規を表示」「ガイドを表示」をクリックして、チェックマークが入っている状態にしてください。
そして、表示された定規の上でカーソルを横にドラッグする。すると、紫のラインが出てきます。これがガイド。制作中のガイドラインとして使うもので、この線はデータ上でしか表示されません(印刷されません)。

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この左側が表1、右側が表4です。
あまり中心ラインに近いと、背表紙に巻き込まれてしまうので、タイトルなど重要な情報を置くときは距離をとりましょう。今回の完成データは背表紙10mmで作っているのですが、倍サイズにしているため、20mmの背表紙を取ります。こんな↓感じ。ガイドは何本でも引けるし、再度動かすこともできるので慌てずに。

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2-3.写真を入れてみる
このあたりからいよいよ表紙っぽくなります。まずは写真を貼ってみましょう。
「素材」→「無料写真」で、写真を配置することができます。
上部の検索窓からも、単語で検索ができます。日本語でも探せるけど、英語のほうが精度いいかも。とりあえず、横長のよさげな写真をクリック。
(自分で撮影した写真や、他サイトから見つけてきたフリー素材をアップロードすることもできます。やり方は3-2で説明しています)

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選んだ写真が、キャンバスに反映されます。
でもこのままだと小さいので、拡大しましょう。画像の角をドラッグすると、拡大・縮小できます。キャンバスからはみ出ても大丈夫。
あと、画像を選択していると、上の方にツールバーが出てきます。

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ツールバーに並んでいるのは、左から順に
1.画像を編集:フィルターをかけたり、明度彩度の調整ができます
2.切り抜き:トリミングができます
3.反転:左右上下回転できます
4.アニメートと時計アイコン:これはアニメーション効果の付与なので、印刷物には使いません
5.透明度(チェッカーマーク):画像の透明度を変更できます
6.カギアイコン:選択した画像のロックができます。ロックをすると、動かせない・編集できない状態になります
7.ゴミ箱:選択画像を消去します。deleteやbackspaceでも消せます

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↑フィルターをかけ、明度調整を行ない、トリミングもしました。
自由に加工して構わないのですが、あまり鮮やかすぎる青や、蛍光色のような色は、印刷物では再現しにくいので、注意が必要です。

2-4.タイトルを入れてみる

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ツールボックスの「テキスト」→「見出しを追加」でテキストを追加できます。
文字サイズが違うだけなので、「小見出し」でも「本文」でも何でもいいです。
テキストを選択していると、上のツールバーの内容も変わります。
フォントやサイズ、色など自由に変更できます。特に便利なのは「間隔」、文字間・行間を非常にわかりやすく調整できます。ここ3年で縦書きもできるようになった!

さらに、Canvaはイラストも使えます。「素材」→「グラフィック」から選択可能。
あまり種類はないのですが、色が自由に変えられるのが意外と便利。

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文字情報を置く時に注意して欲しいことは「端に近づけ過ぎない」ことです。
端は、製本の後に断ち切られます。わざと文字がはみ出たデザインならいいのですが、大事な情報が途切れないように注意しましょう。


2-5.データをダウンロードする

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右上の「ダウンロード」で「PNG」を選択してください。
「JPG」や「PDF」になっている場合は、変更します。「PNG」にしたら、ダウンロード。これで、表紙はほぼ完成です!あと少し!

3.入稿用データを作る

3-1.入稿用のキャンバスを作る
ここからは、今までの応用です。Canvaのホーム画面に戻り、もう一度「画像サイズを指定」で、新しいキャンバスを作ります。
ここで入力する数値は2-1で計算した数値です。2倍にしてないやつ
幅は302+各自の背幅mm、縦は216mm。背幅5mmなら307×216mm、背幅10mmなら312×216mm。本来の入稿サイズでキャンバスを作ります。

3-2.表紙データを配置する
新しいキャンバスに、さっき作った表紙データを配置します。
ツールボックスの「アップロード」→「メディアをアップロード」で、表紙データを選択してください。

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さっきまで作ってた表紙画像が、配置されました。
これをキャンバスに合わせて、拡大してください。はみ出さないように。

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この画像を再びダウンロードします。今度は「PDF(印刷)」を選択してください。
このPDFデータが、印刷所に入稿できる表紙データです。
「トリムマークと塗り足し」にはチェックを入れないように。もう塗り足し部分込みで作ってますよね。

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これで入稿できる表紙データ完成です!おつかれさまでした!!
この世にどんどん小説本があふれ出ますように!!

おまけ
文字書きが直面する「なんだそりゃ訳わかんねえ」問題のひとつ、解像度について。すげえ雑な判別方法の話をすると、DLしたPDFを400%ズームしてみたときに、文字や写真がモザイク状になってなければ、まあ大丈夫です。

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上の画像でいうと、左はちょっと厳しい。右は大丈夫。
左の状態でも、印刷所によって対応が変わってきますので、まずは相談してみましょう。